❶チックへの認知行動療法を受けてみようと思った理由を教えてください。

専門の病院でトゥレット症候群との診断を受け、薬での治療を勧められました。副作用等の説明も受けましたが、子供の体なので、薬を試す前に、薬以外の方法はないかと探していた際に、認知行動療法について知り、受けてみたいと考えたためです。

❷セッションを受ける前ご不安だったことなど何かございますか?

子供本人も、家族も時間をかけた取り組みが必要との情報を見ていたので、やり遂げられるだろうかという点と、コロナ禍で、オンラインでのセッションで効果がでるのだろうかという点が不安でした。

❸セッションを受ける前のお子様のチックの種類や状態を教えて下さい。

主な症状は、下記の4つです。

①前歯で上唇の内側を噛んでしまう
②上半身や首にぐっと力を入れてしまう
③肩をすくめる
④鼻を潰したり伸ばす

頻度はいずれも1時間に3~5回程度で、唇の内側が傷づいたり、学校や、外でも、体を硬直させるような動きをしてしまうので、周囲の目も気になってしまうような状況で、本人も辛そうでした。

❹セッションやホームワークではどの様なことを行いましたか?

はじめのインテーク面談で、トゥレット症候群自体の説明、認知行動療法自体の説明と、谷さん自身が当事者である立場から、当事者本人の感じる辛さや、周りからの接し方など、様々なことを丁寧にご説明頂きました。
 

定例のセッションでは、最初に、チックの状況のヒアリングがあります。それぞれのくせの種類毎に、10段階での強さと、頻度について、本人が状況を認識して説明します。

その後、チックの中で集中的に取り組むターゲットを決め、チックを抑えるための拮抗反応について、本人、家族と一緒に、どのような動作であれば、効果的に取り組めるか話し合いながら決めていきます。その後は、その拮抗反応を練習します。

ホームワークでは、下記の4点を毎日実施し、それを記録します。

①ハビットリバーサル
②腹式呼吸
③筋弛緩法
④ストレスチェック

①は、日々1時間程度、症状を観察し、チック毎の回数、拮抗反応で抑えられた回数や、チックをやりたい衝動が消えるまでの時間などを記録します。チェックする項目自体は各セッションで話し合って決めた内容となります。はじめのうちは、チックの前駆衝動をキャッチするためのアウェアネストレーニングを行い、衝動を捉えられるようになったら、拮抗反応で抑えるようにしていきます。併せて、チェック時の状況や、日々のチェック時以外での気付きなども記録しておきます。

②は、ストレスを抑えリラックスするための呼吸法です。意識的な呼吸に集中することで、ストレスを抑えるようにします。

③は、一旦体に力を入れた後、脱力することで、同様にストレスを抑える方法となります。これらは、普段、ストレスを感じた時に対応できるよう、日々のHWで練習をします。

④は、スマホのアプリを使って、②、③の後、ストレス値を計測し、記録します。

毎日なので、本人だけでなく、チェックする家族も大変ですが、日々記録をつけることで、本人も周りも状況を把握することができ、セッションでも次のアクションをどうするか効果的に話し合うことができると思います。

❺セッションやホームワークを行っている時のお子様の様子を教えて下さい。

セッションでは、なるべく子供本人自身が自分の症状など、自分の言葉で説明するようにしてもらいました。谷さんも、やさしく対応していただいたので、子供も積極的に、拮抗反応や呼吸の練習に取り組んでいました。やり方などで、疑問点や、こうした方がやりやすいといったような意見も、自分で説明して、HWでの取り組み内容を決めていくことができました。

❻主要セッションが終了した現在のチックの状態を教えて下さい。

セッション実施前に比べて、頻度や、強さは格段に下がっています。

①前歯で上唇の内側を噛んでしまうくせ
②上半身や首にぐっと力を入れてしまうくせ
③肩をすくめるくせ
④鼻を潰したり伸ばすくせ
 
①、③、④については、全く出なくなり、②のみ、軽度のものが多少残っている状況です。

②についても、自分でコントロール出来ており、学校や通学中などは、症状を抑えられています。

❼セッションをお受けになられたお子さんの感想がもしあれば教えて下さい。

はじめる前と比べて、症状の種類も、辛さも減って、過ごしやすくなりました。セッションも谷さんがやさしく、親身になって接してくれたので、安心して取り組むことが出来ました。ありがとうございます。

❽チックへの認知行動療法に対する親御さんの感想を教えて下さい。

当初一番症状の出ていた前歯の嚙みしめは、指で嚙まないようにする拮抗反応を実施しましたが、効果が抜群でした。子供自身が自分で症状が出る前の前駆衝動を捉えられるようになって、今までは繰り返すしかなかったチックが、抑えられるようになると、傷もなくなり、チックの回数もどんどん減っていきました。

3か月の取り組みの間には、なくなった代わりに新たなチックも出てきましたが、セッションで、その状況も話をして、それぞれの対処を決めていくことが出来ました。

保護者側の心境としては、症状を止められないことに対して、強く言ってしまうことも当初はありましたが、セッションを通じて、この症状自体がどういったもので、当事者本人の辛さや、大変さを、谷さんから改めて教えてもらうことで、誤解していた部分を正すことができ、落ち着いて状況を見ることができ、子供への接し方も変かわりました。

子供自身も、自分ではどうすればいいのかわからなかった状況から、一つ一つのチック毎に、きっかけがなんなのか、どうすれば、症状を抑えて、衝動を我慢できるのか、丁寧に一緒に探ってくれるので、安心して相談できる状況になって、日々の取り組みも根気よく実施できるようになりました。

HWを毎日時間を取ってやることは大変でしたが、目に見える効果があったので、家族も頑張って取り組むことができました。

認知行動療法は、子供自身が自分を理解し、症状とうまく付き合っていく方法を学ぶやり方なので、今後、症状がひどくなったり、新たなものが出てきたときでも、今回学んだこと使って、ある程度自分で対処できるようになったのではないかと思います。

谷さんは、子供相手に緊張させないような雰囲気で話をしてくれました。やさしいだけではなく、HWでやる内容や練習など本人が頑張らなければいけない部分では、しっかりと話しをしてくれて、子供もやる気を持って対応できるようになっていたと思います。

❾チックには様々な治療法がありますが、認知行動療法はどの様な方にお勧めできますか?

自分の症状を認知して対処するという治療法なので、ある程度自分のことを客観的に見れる年齢である必要があるかと思います。また、長い取り組みになるので、家族や周りの人の協力が得られる状況であれば、効果が高いと思います。
 
❿最後にチックでお悩みの親御さんは大変多くいらっしゃます、その様な方にお伝え出来る事や、アンケートにない内容で、お伝えしたい事がもしありましたらご記載をお願い致します。

いろいろな症状が出て悩んでしまうと思いますが、一番つらいのは子供本人なので、子供に寄り添って対応をしていくことが大切だと思います。

ですが、そう簡単にはできないので、自分達も親の悩みや子供への接し方について、正直にセッションで相談させてもらい、アドバイスをもらいました。

悩みを抱え込み過ぎず、吐き出すことで変わる部分もあると思います。あきらめないで、周りに相談しながら、焦らずに対応していくようにしてください。