❶チックへの認知行動療法を受けてみようと思った理由を教えてください。

〈当事者〉病院、針治療など色々試したが、イマイチ良くなる兆しがなかったため。

〈母親〉チックの発症は2015年です。2020年から舌を噛むチック、口腔内壁を噛むチックが始まり、傷と痛みで食事がまともにできず、激痛に耐える日々が1年続きました。薬、サプリメント、鍼、漢方と治療をしましたがよくならず、残す治療法はDBS手術しかないと思って、「トゥレットの部屋」のFacebookで手術について聞きました。するとまだ認知行動療法という治療法があり、やってみて効果がなかったら、それから手術をしたらどうかとアドバイスをいただいたため、まずはやってみようと思いました。

❷セッションを受ける前ご不安だったことなど何かございますか?

〈当事者〉効果があるのかどうか。

〈母親〉認知行動療法自体に不安はありませんでした。しかし、全ての人に効果があるわけではないと聞き、息子には効果があるのだろうかとの不安はありました。

❸セッションを受ける前のお子さんのチックの種類や状態を教えて下さい。

〈当事者〉歯を強く噛む、舌を噛む、血が出て毎日ハンカチをくわえる生活。

〈母親〉様々なチックがありましたが、一番困っていたのは、舌噛みと口腔内壁を噛むことです。激痛と傷でまともに食事が取れませんでした。歯ぎしりを始め歯を折ってしまった中3から、マウスガードは24時間つけたまま(4年半)で、舌噛み、口腔内壁噛みが始まってからは、起きている時はずっとハンカチをくわえていました(多少の緩和の為)。ハンカチをくわえていても、噛みが治まっているわけではなく、常に噛んでいるような状態です。食事の時はハンカチを外さないと食べられませんが、ハンカチを外すとダイレクトに口の中を噛みだしました。口の中を噛んで痛くて食べられなくなるよりも早く、食事をかきこむスピード勝負のような感じでした。他のチックは音声、首振り、足を踏み鳴らす、指を突き上げる、喉鳴らし、熱い鍋肌を触る等々。電車には乗りたくない。図書館には何年も行っていない。ハンカチをくわえだしてからは、外に行けない。家にこもって痛みに耐える生活をしていました。

❹セッションやホームワークではどの様なことを行いましたか?

〈当事者〉チックの症状を見直し、対処方法を考え、少しずつできる目標からホームワークを行っていく。

〈母親〉セッションでは、一番困っている「舌を噛むこと」「口腔内壁を噛むこと」からアプローチしてきました。噛みたくなった時に、「噛まなくてすむ動作」はどのような動作か、谷さんと息子で考えていきました。噛まなくてすむ動作が決まったら、最初は1日1時間意識してやってみる。1時間のうち、噛みたくなったのは何回か、そのうち噛まずにすんだのは何回かと回数を数えました。その後時間を増やしていきました。

❺セッションやホームワークを行っている時のお子さんの様子を教えて下さい。

〈母親〉私はセッションには初回だけしか参加しておらず、その後は息子1人で谷さんとのセッションを行っていたので、詳しいことはわかりません。気になりましたが、今後の長い将来、息子自身が病気に向き合っていかないといけないと思い、干渉しないようにしていました。たまに「ホームワークしている?」と聞きましたが、詳細は聞きませんでした。

❻セッション終了後のチックの変化を教えてください。

〈当事者〉効果のあまりないものはほんの一部ながらあったものの、一番辛かった舌を噛むチックに関してはほぼ0になりました!

〈母親〉2021年9月から行動療法を始め、2022年1月末頃からハンカチをくわえない時間を作っているようでした。3月始めになっても私の感覚的には「6か月認知行動療法をやってもなかなかよくならないのだな」と感じていて、「将来どのようにして生きていけばいいのだろうか」と悲観的でした。しかし3月中頃から、ハンカチをくわえない時間は増えていき、そうすると外に出るのも恥ずかしくなくなり、3月末には東京まで電車で行ってくることが出来ました。行くまでには一時的に「噛み」が増え心配しましたが、少しずつ行動療法の手ごたえを感じるようになってきました。

4月にはハンカチが取れ(舌噛み減少、口腔内壁噛み減少、痛みからの解放)、外出できるようになりぐんと良くなってきました。その後は噛み以外のチックに対して、行動療法を行ってきました。7月に、4年半つけていたマウスガードを自ら取ることが出来、谷さんとのセッションを終了しました。今後別のチックが現れても自分で考えてコントロールしていける事を本人に確認しました。

現在私が感じるには、首振り、足の踏み鳴らし、喉鳴らし、指の突き上げ等なくなりました。音声は少しありますが、気にならないほどです。本人にしかわからない数々の衝動はあるようですが、電車にも乗れるし、図書館にも行けるようになり、やりたいことができるようになりました。

❼チックへの認知行動療法のセッションを受けた感想を教えて下さい。

〈当事者〉谷さん自身も当事者であるので、辛いこと、言いたいことを理解してくれて、とても嬉しかったです!

〈母親〉1年前は、チックは治すことはできない、手術をしても治らない人もいる、一生どうにもならない病気だと思っていました。私が年老いた時、どうやって生きていけばいいのだろうと、悲観していました。認知行動療法でチックがおさえられるようになり、ご飯を食べられ、痛みから解放され、外出でき、やりたいことができるようになりました。息子の人生、救われました。チックに苦しんでいる全ての方たちが認知行動療法を知って、苦しみから解放されることを望みます。

❽チックには様々な治療法がありますが、チックへの認知行動療法はどの様な方にお勧めできますか?

〈当事者〉効果あるなしは人それぞれとなってしまいますが、それは薬物療法でも同じなので、すべての方にお勧めできます。

〈母親〉重度の方も、軽度の方も全ての方にお勧めします。この5年半、治療法をいろいろ調べましたが、効果がなくて困っている方々の意見を沢山目にしました。子供のチック、大人の難治性トレット症、様々な方に認知行動療法で楽になってもらいたいです。

❾最後にチック・トゥレット症でお悩みのお母様方は大変多くいらっしゃいます。そのような方にお伝えできることや、アンケートにない内容で、もしお伝えしたいことがあればご記載をお願いいたします。

〈当事者〉根性論というわけではないですが、 あと一回だけ、、と思ってチックをやってしまうことがあると思います、その一回を抑えられる心がすごく大事です。

〈母親〉現在苦しんでいる方たちに、息子の経緯、経験が届けばいいなと思います。薬(エビリファイ)・サプリメント(ナイアシトール)・中国鍼・漢方は効きませんでしたが、認知行動療法は効果があり、劇的によくなりました。11か月程でセッションを終了しました。

【息子(2022年現在20才)のチック発症から認知行動療法にたどり着くまで(お母様より)】

<中学2年>

音声チックが出始め、1か月程出て治まる。年2回程。少し耳障りだと思うくらいで指摘するほどではなく、チックとは知りませんでした。

<中学3年>

11月:キリキリ歯ぎしりをするようになり、あまりにひどいので歯が折れるから止めるように注意していました。

12月:歯ぎしりは治まらず、歯は根元からぐらぐらになり、ついに下の前歯が2本折れてしまいました。歯が折れたショックと痛みで過呼吸発作を起こし、「学校に行けない。死にたい」と泣いていました。歯医者さんからは「受験期でお母さんが追い詰めたのではないか」と怒られました。早急に10か所くらいの心療内科に電話しましたが、「子供しか診ません」「大人しか診ません」「初診は2か月先になります」と、予約が取れませんでした。結局中学の養護の先生のつてで、車で1時間半かかる病院に、1月に行けることになりました。

1~3月:受験生には検査を行わないということで診断はつかず、とりあえず薬を処方してもらいましたが良くならず、様々なチックが現れました(当時はチックとは知らない)。歯ぎしり、首振り、指を無理やり反らせる(骨が折れるのではないかと思うほど)、音声等々。歯医者でマウスガードを作ってもらいましたが、すぐに噛んで壊してしまいました。歯ぎしりが止まらず、次の歯が折れそうでも、歯医者では「マウスガードを作っても噛んで壊してしまうのでどうすることもできない。病気の事は心療内科で」と言われ、心療内科では「歯の事は歯医者に」と言われ、なす術がありませんでした。割り箸を横向きにくわえさせましたが、噛んでいる奥歯が痛くなり駄目でした。受験前に、歯をもう1本折ってしまいました。

<高校1年>

高校に入学し通院が大変なため、養護の先生に学校近くの診療所(2か所目)を紹介してもらいました。様々なチックは治まらず、薬を飲んでもよくなりませんでした。薬はどんどん増やされ、朝はむりやり起こし、学校ではずっと寝ていて、家に帰ってからもすぐに眠る。1日のうちで登下校の2時間くらいしか起きていないという状態になりました。診療所の先生は「歯ぎしりで歯が揺れ、痛くて辛いので、薬を増やして眠らせるしかないでしょう」と言っていました。検査で6月にチックと診断されましたが「チックは心の病気。歯を噛むのは自分で噛んでいるのだから、なぜ噛んでいるのか考えなさい」と言われました。

もともと明るい性格であること、本人の「噛みたくないのに噛んでしまう」という訴えと、先生の言うことに矛盾を感じ、チックのことを調べました。東京のトゥレットの集まりにも行き、診療所の先生の考えは間違っていることを確信しました。転院先探しも、次の先生もチックを理解していなかったらと思うとなかなか決められず、転院したのは11月になってしまいました。次の診療所(3か所目)は、薬とナイアシトールで治療をするところでした。転院して薬の量は減りましたが、やはり授業中は眠ってしまい、薬を飲んでもよくならないため、2年通って高3の秋で通院を止めました。その後また1本歯を折ってしまいました。チックの内容は、歯ぎしり、足を踏み鳴らす、首振り、横の人に息を吹きかける、熱い鍋肌を触る、音声等々。

<専門学校>

6月:コロナ禍で6月から通学が始まりました。口腔内壁を噛むチックが始まり、痛みで食べ物が食べにくくなりました。

7月:舌を噛むチックが始まりました。激痛で学校に通えなくなり、家で布団にくるまり痛みに耐える日々。痛みから逃れるために「死にたい」と言い、(眠るために)睡眠薬をちょうだいと言っていました。舌は上下の歯で噛み挟むため穴が開き、もう少しで貫通しそうになっていました。激痛で食事ができず、ドリンクゼリーや栄養ドリンクでなんとか命を繋ぐ日々。ネットで、中国鍼でチックが治ったとの情報を得て、藁にもすがる思いで、大阪まで飛行機で通い始めました。1か月に8時間×4日間。漢方薬も煎じて飲みました。専門学校は激痛のため通学できないので退学しました。大阪には1年間通いましたが、結局良くなりませんでした。マウスガードは中3から24時間ずっとつけていました。舌を噛むようになってからは、少しでも緩和されればと思い常にハンカチをくわえていました。食事もままならず、激痛に耐える日々が1年間続き、あとはDBS手術しかないと思い、調べて「トゥレットの部屋」のFacebookにたどり着きました。手術情報を得るため問いかけたところ、皆さんに、手術をする前に認知行動療法をやってみたらとアドバイスいただき、行動療法にたどり着きました。