お子さんにチックが発症したら先ず知っておくべきこととは?

◆ うちの子チックかなと思ったら、親御さんは先ずどうしますか?

軽いチックであれば何もせず少し様子を見るかもしれませんね。

しばらく経ってもチックがなくならない場合、かかりつけの小児科に行くかもしれませんね。

生活に支障がなければ、小児科の先生は「チックには触れず、なるべくストレスを減らしてあげてください。しばらくすれば落ち着きますよ。もし辛かったらお薬を飲んでみますか?」などと言われるかもしれませんね。

このブログを記載している私は、3歳頃から数十年チックと共に生活を送っており、重度(YGTSS38/50)のトゥレット症当事者でもありました。

現在は様々な治療のかいもありチックは寛解しております。

私は自身の経験を基に、トゥレット症(チック症)で苦しんでいる方の支援を行うため、心理学や精神医学を学び、チックとの上手な付き合い方や、CBIT/ハビットリバーサル、呼吸法等のやり方をこれまで多くの方にお伝えしてまいりました。

今回のTSブログでは、これまで私が培ってきたことを基に、様々な治療を開始する前に実は知っておくべきこと行うべきことをお話したいと思います。

◆ どんな治療を行う際にも基本となるのが、⑴家族ガイダンス ⑵心理教育 ⑶環境調整です*。

チックとはどういったものなのか?

見守るだけではなく、家庭内で出来ることはないのか?

チックに行われている治療法とは、そしてその効果は?

先ずはこれらを正しく知ること、そのうえで今できることすべきことを考えていきましょう。

❶チックを知る

・チックとは、突然繰り返される不規則な動きや発声です。身体にムズムズなどの不快感や違和感が突然起こり、チックを出すとそれがいくらか解消されスッキリします。「ムズムズ → チック → スッキリ」といった一連の流れが、無意識で起こる場合と意識的に行っている場合があります。

・チック発症の原因は、お子さんのこころの問題や親御さんの育て方のせいではありません。生まれつきチックが出やすい体質だと理解しましょう。

・チックをやめなさいと指摘することや、チックを常に触れる反応することは基本NGです。チックが出ていてもチックがないかのように接してあげてください。

・チックが1年以内に消失する場合と、悪化や軽減を繰り返しながら大きくなると共に時間をかけて改善していく場合に分かれます(一部成人後も継続する重度のトゥレット症有)。

・チックは緊張や不安、イライラや興奮、ストレスや身体の違和感、疲れや睡眠不足など様々なことをきっかけに出てきたり悪化したり、そしてチックの種類が入れ替わったりします。

・チックが直ぐに消失しない場合、お子さんがチックのことを理解し自然に受け入れられるよう、チックで困ったことがあれば直ぐに相談できるよう、親子で少しづつチックがどういったものなのかお話をし、それを家族みんなで共有しましょう。

❷チックを分析する

お子さんの様々なチックそれぞれについて、どんなときにチックが出やすいのか?どんなときにチックが悪化しているのか?逆に、どんなときはチックが出ていないのか?どんなときはチックが目立ちにくいのか?を事細かく調べる。チックが起こりやすい状況は、お子さんそれぞれ異なります。これらは機能分析というのですが実はこれがとても大事。チックを誘発している要因、チックの引き金がある場合は、その引き金から対応しましょう。

❸環境調整を行う

機能分析の結果判明した、チックが起こりやすい状況、悪化しやすい状況を可能な限り減らしましょう。チックの引き金がなくなったり良くなれば、結果チックも落ち着く可能性があります。チックは出れば出るほどクセづきやすく、逆にチックが出なければ出ないほど軽減していく可能性が高いです。しかし我慢しなさい、やめなさいと言うのはダメですよ。環境調整を適切に行いチックが起こりにくい状態を作ってあげましょう。

❹チックの治療法とその効果を知る

薬物療法やCBITを含めた認知行動療法、チックのための歯科スプリント療法や漢方、そして脳深部刺激療法DBS、その他にも明確なエビデンスはないがチックに対して行われている治療は様々あるかと思います。しかしながら、これら全ての治療法は残念ながらチックを完治できるものではなく、その効果も個々に異なります。お子さんによってはとっても効果があったり、逆にまったく効果がない場合もあるかもしれません。

それぞれの治療法には長所短所があり、どの治療法がそれぞれのお子さんに適しているかを考えることも大切です、症状の重い子は複合的な治療を検討しましょう。

※治療法について詳しくお知りになりたい方は無料相談をお申し込みください。お子さんの状態をお伺いしながらどのようにすべきかアドバイスさせていただきます。

❺チックの治療は悪化を防ぐことがポイント

確実に治療できる方法がないからこそ、チックを悪化させず上手に付き合っていくことを考える。チックはいくらかあっても軽症であれば大きな問題にはなりにくい。チックが出やすい体質というのは、アレルギー体質のように直ぐには改善されるものではないかもしれません。

しかしその体質は成長と共に徐々に改善していく可能性が高いでしょう。それまでの間、自己評価が低下したり社会適応が不良になったりしないよう適切に対応してあげましょう。

◆ 適切な時期からお子さんとチックのお話をしましょう

「チックには温かい無視を」と言われたりしますが、必要なお話はしましょう。

お子さんがチックに対してどう思っているのか?悩んではいないのか?学校で困っていることはないのか?これらはお子さんに直接伺ってみなければわかりませんね。気になることがもしあれば、お子さんに自然に聞いてみましょう。

患児のチックに対する思いや理解力に配慮しながら、本人にわかりやすくチックについて説明することも必要です。その際には、上手く付き合っていくうちにチックが軽くなる可能性が高いこともお話ししてあげましょう。チックをお子さんでもわかりやすく説明した本を活用し、お子さんのチックに対する理解を深めてあげることも出来るかもしれません* 。

しかしながら、お子さんによっては話題にしただけで一時的にチックが増えてしまう場合もあります、当事者は基本チックに触れられることを嫌います。「ちょっと静かにして!」や「少しの間やめられないの?」などの指摘や注意はもってのほか、「今日はチックが少ないね」や「チックが酷いけど大丈夫?」などの優しい声掛けすら嫌がるお子さんもいますので、チックのお話をする際はタイミングが重要ですね。

環境調整は先ず家庭内からです。お子さんとの会話のなかからどう対応すればよいのか?どのようなサポートが必要なのか?治療が必要なのかそうでないのか?様々なことがより適切に判断出来るのだと思います。

◆ チックがあったら必ず治療が必要なのでしょうか?

チックには、治療が必要な場合とそうでない場合があると私は考えています。ではどういった時に治療が必要となるのでしょうか?

これは神経発達症(発達障害)全般に言えることかもしれませんが、チックがお子さんの生活に支障をきたしているなど、お子さんがチックで困っている場合、治療やチックをコントロールするためのトレーニング(CBIT:認知行動療法)を検討・開始しましょう。

一方、チックはいくらかあるものの生活に支障がなくお子さんも特に気にしていない場合は、ストレスの少ない生活を心がけながら環境調整を行いしばらく様子を見る。状況に応じて病院の受診を検討しましょう。

◆ 最後に、チックが出やすい体質というのは実は悪いことだけではないんですよ

チックが出やすい体質とは、ムズムズなど自分の身体の変化や違和感を敏感に感じ取ってしまうことや、なんだかわからないがこうしないと落ち着かない納得できない強い拘りかもしれません。その感覚は、ネガティブな面としてはチックに現れてしまいますが、思考や感情、行動の面にポジティブな影響も与えていると私は感じています。

チックのある子は繊細で感受性が強いです、だからこそ人の気持ちを汲んだ行動ができます、優しい子が多いですね。感性が高く芸術の分野で才能を発揮する子も多いですね。色んなことを考える力を持っています、記憶力や頭の良い子が多いです。運動神経が良い子、歌が上手な子、強い拘りは興味のあることに没頭しその分野で才能を発揮します。

目立つチックがあるとどうしてもそればかりに目がいってしまうかもしれませんが、お子さんの長所にもちゃんと目を向けそれを育み自己肯定感を高めてあげましょう。チックを悪化させるかもしれない状況があればその対応を検討し、チックと上手に付き合っていけるよう環境を整えてあげましょう。

チックのみにとらわれるのではなく、長所も含めた本人全体を考えて対応してあげてください。チックがあってもお子さんの好奇心や向上心を大切にし、本人が取り組めそうな目標を立てそれに向かっていけるようサポートしてあげましょう*。

もっとチックについて詳しくお話をお聞きになりたい方、CBITを含めた認知行動療法を学びたい、当会の無料の個人セッションをご希望の方はこちらをご確認の上お申し込みくださいませ。当会以外にもいくつかの大学病院にて無料または非常に低料金でCBITのセッションを受けることが出来る場合もございます。

東京大学医学部附属病院、こころの発達診療部のHPに「チック」や「くせ」とうまくつきあっていけるようにという資料がございます。こちらも参考になるかと思いますのでもし良かったらご覧ください。

【参考文献】*金生由紀子「チック症群/チック障害群」『精神医学症候群Ⅰ(第2版)』(別冊日本臨牀No.37)116-129頁、日本臨牀社、2017.