チックの行動療法・認知行動療法『 ERP』とは?

トゥレット症・チック症患者に対して行われる行動療法・認知行動療法として、ハビットリバーサルトレーニング/CBITがあることは当TSブログをお読みいただいている方はご存知のことと思います。

Behavioral Therapy: BT(行動療法)の目標は、自制心を強化し、チックを悪化または維持する要因を減らすためのチック特有の行動テクニックを患者に提供することです。

ハビットリバーサルトレーニング(以下HRT)/CBIT以外にもチックに対して効果的な行動療法・認知行動療法があることをご存知でしょうか?

それが Exposure and Response Prevention: ERP(暴露反応妨害法)です。

ERPは現在、主にヨーロッパで研究が進んでおり、チックに対して効果があることがいくつもの論文より証明されています。

ERPは強迫症(強迫性障害)に対しても治療として行われています。

ERPとHRT/CBITどちらの行動療法の方が優れているか、厳密に判断することは現段階では難しいのですが、多くのチックが併存する場合ERPが効果的であるともいわれています。

また、HRT/CBITと比較してERPはトレーニングの内容がシンプルであるため、セラピストの介入が少ない時間でも効果を発揮することが示されており、費用対効果が高くなることが示唆されています。

イギリスではOnline remote behavioural intervention for tics: ORBITという、インターネットを利用したセラピストと保護者が支援するERPを利用した行動介入の研究が行われており、その効果も立証されています。

ERPとHRTの違いを簡単に説明すると、HRTはひとつずつのチックを拮抗反応を使い制御するトレーニングを行うのに対して、ERPは前駆衝動に暴露しながら全てのチックを一度に制御するトレーニングを行います。

アプローチの方法は異なりますが、結果的にはどちらも同じことを行っていると私は考えています。つまりチックをやらない練習を行うことで、結果チックが徐々に起こりにくくなるということです。

前述したように、どちらが優れているということではなく、ERP、HRT/CBITそれぞれの長所短所を考慮し、患者それぞれに適したより包括的で合理的な行動介入を行うことが重要だと考えます。

当会では、先ずは当事者が行動療法を行えるか、インテーク面接行い判断します。そして、お子さんのチックに対してHRT/CBITまたはERPどちらの方が効果的にトレーニングが行えるかを分析しながらsessionを行います。

行動療法・認知行動療法(HRT/CBIT・ERP)は全ての方に効果があるとは限りません、併発している疾患や様々な問題がトレーニングに支障をきたす場合があります。チックに対する十分確実な治療法はいまだ確立されておりません、大切なことは患者それぞれに適した治療法を検討すること、そしてチックと上手く付き合っていけるようになることも必要で重要な考え方です。

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【参考文献】

Sabine Wilhelm, Ph.D.,Thilo Deckersbach, Ph.D.,Barbara J. Coffey, M.D., M.S.,Antje Bohne, M.S.,Alan L. Peterson, Ph.D., andLee Baer, Ph.D. Habit Reversal Versus Supportive Psychotherapy for Tourette’s Disorder: A Randomized Controlled Trial | American Journal of Psychiatry. 2003.

Cara W.J Verdellen, Ger P.J Keijsers, Danielle C Cath, Cees A.L Hoogduin. Exposure with response prevention versus habit reversal in Tourettes’s syndrome: a controlled study. Behaviour Research and Therapy Volume 42, Issue 5May 2004, Pages 501-511. ScienceDirect.

Charlotte Lucy Hall et al. Investigating a therapist-guided, parent-assisted remote digital behavioural intervention for tics in children and adolescents-‘Online Remote Behavioural Intervention for Tics’ (ORBIT) trial: protocol of an internal pilot study and single-blind randomised controlled trial. BMJ Open. 2019.

Chris Hollis et al.Therapist-supported online remote behavioural intervention for tics in children and adolescents in England (ORBIT): a multicentre, parallel group, single-blind, randomised controlled trial. Lancet Psychiatry.2021 Oct.

Per Andrén et al.Therapist-Supported Internet-Delivered Exposure and Response Prevention for Children and Adolescents With Tourette Syndrome: A Randomized Clinical Trial. JAMA Netw Open. 2022.

Chris Hollis et al. Long-term clinical and cost-effectiveness of a therapist-supported online remote behavioural intervention for tics in children and adolescents: extended 12- and 18-month follow-up of a single-blind randomised controlled trial. Journal of Child Psychology and PsychiatryVolume 64, Issue 6 p. 941-951.2023.