チックの行動療法体験談/改善事例『CBITは、練習やそれを続けていく努力も必要ですが、とても効果を感じることが出来ました』東京都8歳男の子

チック症状への認知行動療法(CBIT/ハビットリバーサル・呼吸法・ERP)のオンラインセッションをお受けになられた、8歳男の子のお母様より、セッションのご感想をいただきましたので投稿いたします。

1. チックへの認知行動療法(CBIT/ハビットリバーサル・呼吸法・ERP)を受けてみようと思った理由を教えてください。

年長の頃にチックが始まり、その際は栄養療法で改善しました。(ビタミンB、ヘム鉄、ナイアシンのサプリ服用)1年半程落ち着いた状態をキープしていましたが、2年生の6月頃から再燃し、また悪化してきてしまいました。栄養療法を強化して(グルテン・カゼインフリー、おやつ減らす、プロテインのサプリ追加)改善を目指したのですが、今回はあまり効果がみられませんでした。CBITは聞いた事はありましたが、当時あまり情報がなく取り組んでいませんでした。トゥレット当事者会でオンラインセッションをして頂けることを知り、勇気を出してコンタクトさせて頂きました。

セラピストからのコメント・・・チックは悪化と軽減の波を繰り返します、CBITも含めたチック症状への認知行動療法は、チックの悪化を防ぐ一つの方法とも言えるかもしれません。どんなことも行動を起こすのに勇気が必要な時があると思います、投稿をご覧いただいている皆様も、お子様のため、ご自身のため、何事にも勇気を持って是非一歩踏み出してください。

2. セッションを受ける前ご不安だったことなど何かございますか?

8歳の男子がどれだけCBITを理解し、実践できるかは不安でした。呼吸法など全然完璧には出来ていませんが、子供にとってもチックはどういうものでどう扱えばいいかを、セッションを通して理解できたのはとても大きな違いだと思います。親にとってもチックとどう向き合い、どう対処すべきか教えていただけることで、チックに対する不安やストレスが大きく和らいだと思います。

セラピストからのコメント・・・CBITは9歳くらいからセッション可能と言われております。その理由として、チックが起こる前のムズムズなどの前駆衝動への気付きがこの頃より増える、セラピストが話す内容を理解出来るようになる等の理由が考えられます。必ずしも9歳以上ということではなく、10歳でも出来ない子もいれば、8歳で出来るようになる子もおり、個人差がございます。

3. セッションを受ける前のお子様のチックの種類や状態(頻度や大きさ)をわかりやすく教えて下さい。

テレビやYoutubeを見ている時、本を読んでいる時、ごはんを食べている時、寝る前、歩いている時、など特定の状況でチックが出やすくなっていました。一番ひどい時は体幹チックが強く出ていたので、テレビを見ながらジャンプしたりしていました。物を持つと少し放ってしまうようなチックもありました。んっんっと声が出る、指を組む、口を尖らせる、などは落ち着いた時期も割と出やすいチックでした。

セラピストからのコメント・・・テレビやスマートフォンで何かを見る、ゲームや何か楽しい事をしている時など、比較的チックは起こりやすいと思います。その他にも疲れている時、イライラしている時などストレスが溜まっている時もチックが出やすい状況です。この様にお子様それぞれチックが出やすい状況というのがあり、それらを調べることを機能分析といいます。

4. セッションやホームワークではどの様なことを行いましたか?

チックが出やすい状況にして、まずは前駆衝動に気づく練習を教えて頂きました。その後、呼吸法の練習をして、前駆衝動をチックではなく呼吸法で鎮める練習をしました。色々なチックに対しての拮抗反応も教えて頂き、将来的にチックが再燃しても対処できるよう、丁寧に教えて頂きました。

セラピストからのコメント・・・CBITとは、ハビットリバーサルトレーニングを中心に行う認知行動療法です。ハビットリバーサルでチック症状を改善させるためには、前駆衝動への気付きが必須です。前駆衝動への気付きがない、つまりチックが無意識で出ている場合は、アウェネストレーニングを行いましょう。アウェネストレーニングは、必ずしもチックが出やすい状況で行うのではなく、お子様の状態によりトレーニングの環境を見極めます。

5. セッションやホームワークを行っている時のお子様の様子を教えて下さい。

まだ少し幼いこともあり、終始真剣に取り組んでいるわけではありませんでしたが(すみません。。)、先生と母親の話を実は聞いていたようで、セッションを重ねる毎に、CBITの意味ややり方も理解が進んでいったように思います。ホームワークは、子供だけでは雑にやってしまって意味がなかったので、母親がついて誘導して少しずつ上手くできるようになっていきました。うちはHSCタイプで感覚が敏感な為、小さな前駆衝動も敏感にとらえてチックが出てしまうのではというお話もあったのですが、前駆衝動に気づく練習をしただけでも、かなりチックが改善されて、大きな動きのチックが激減しました。

セラピストのコメント・・・小学校の低学年くらいですと、セッションやトレーニングに集中出来ないお子様は多いです。だからこそ親御さんのソーシャルサポートが重要です。アウェネストレーニングを行っただけでチックが改善することは珍しいことではありません。それだけチックの認知の仕方が大事だと言えるのでしょう。トレーニングは、お子様が少しでも楽しめる様、是非工夫してください。

6. セッションが終了した現在のチックの状態を教えて下さい。

口を尖らせるなど、割と目立たない小さい動きのチックは残っていますが、意識しなければ親も気づかないくらいに改善しました。落ち着いた状態が維持できるように、基礎的な体調の管理も引き続き行っていきたいと思っています。

セラピストのコメント・・・CBITとは、チックの完治を目指すものではなく、チックを管理し、悪化させず、穏やかな状態を維持させるスキルを身に付けるものだと私は考えています。そして、何らかの体調の悪化や環境の変化をきっかけに、チックが再発悪化してしまうこともあります。普段からの体調管理もしっかり行いましょう。

7. セッションをお受けになられたお子様の感想がもしあれば教えて下さい。

子供はチックについてあまり話してこないのですが、寝る前にやっている呼吸法の練習はずっと自ら続けていたりと、大事な事だとは認識しているようです。先生が優しい!とも言っていました。

セラピストからのコメント・・・大概の当事者がチックについて話すことを苦手としています。お子様の場合は、呼吸法が特に効果があったと思います。お子様自身もその効果を感じていたからこそ、練習を頑張ってくれたのかもしれませんね。

8. チック症状への認知行動療法に対するお母様の感想を教えて下さい。


最初は、チックに対して出来ることがほとんど無いのだろうか、悪化していくかもしれないのに見守る以外ないのか、という苦しみを抱えて過ごしていました。チックが沢山出ている時期は、チックの為に色々な事を制限したり、チックに生活が支配されているような感じでした。CBITは、練習やそれを続けていく努力も必要ですが、とても効果を感じることが出来ました。2年生の時にCBITを習えた事で、これからチックが悪化してもコントロールしながら乗り越えられるという希望を持って子供の成長を見守れるようになりました。家庭で上手くいかない事が出てきたらまたトゥレット当事者会に連絡してください、と最後のセッションでおっしゃって頂き、お守りのような安心感となりました。

セラピストからのコメント・・・CBITや呼吸法は特に難しいことではありません、やり方とその理屈さえわかれば、親子で実践できます。お子様が大きくなれば自ら行えるでしょう。またお力になれる事があればいつでもご連絡ください。

9. チック症状には様々な治療法がありますが、チック症状への認知行動療法はどの様な方にお勧めできますか?

チックを少しでも改善したいと思っている方、全ての方達が知っておいて損はない治療法だと思います。チック治療のスタンダードとして、広く普及していって欲しいです。

セラピストからのコメント・・・チック・トゥレット症には、いくつかの治療法がありますが、チック症状への認知行動療法は、選択肢の一つになるべき療法だと私は認識しております、当会では今後もセッション及び普及活動を継続していきたいと思います。

10. 最後にチック・トゥレット症でお悩みのお母様方は大変多くいらっしゃます、その様な方にお伝え出来る事がもしあればご記載お願い致します。

何も出来ない、この先どうなるか分からない、という状況が一番辛いと思います。CBITは簡単にスパッとチックが治る訳ではありませんが、親として子供の為に出来ることがある、というのは何よりの救いになると思います。チックの体質があってもコントロールできる、色んな事を我慢しながら過ごさなくてもよくなる、という希望に繋がると思うので、CBITという治療法もぜひ試して欲しいと思います。

セラピストからのコメント・・・この度は、当会のチック症状への認知行動療法(CBIT/ハビットリバーサル・呼吸法・ERP)をお受けになられたご感想をいただき、誠にありがとうございます。

日本国内でのチック症状への治療は薬物療法が主です、薬を服用しても十分な効果がない方、薬を服用する程でもないがどうにかしてあげたい、見守ることしか出来ないの?と思われているお母様も大変多いです。

親子で、当事者自らが、チックを改善するために出来ることも実はあるのです、その事を是非皆様に知っていただけたら幸いです。