チック症・トゥレット症(症候群)の治療法について

現在国内において、医療保険適用となっているチック症状への治療法は、薬物療法や漢方(ツムラ)、そしてDBS手術など

歯科スプリント(チック専用のマウスピース)やボトックス治療は保険適用でない場合もあり。

上記以外にも保険適用外の治療(認知行動療法、栄養療法など)や民間療法などとして、様々な方法がチック症状に効果がある、またはあるかもしれないと言われています。

現在国内で、チック症状への治療法として第一選択肢となっている薬物療法には、実はチック症状の為の薬は存在せず、抗うつ剤や抗精神病薬、SSRI、抗不安薬などが、チック症状を軽減させる場合があり、処方されています。

漢方においても、チック症状に対する効果は明らかになっておりません。

DBS手術に関しては、チック症状の軽減は多かれ少なかれ認められているものの、その効果は個々に異なり、必ずしも術後直ぐに期待する効果が現れるとは限らず、長い年月をかけ緩やかに改善していく場合もあります。

世の中には、嘘か誠か様々な情報が飛び交っています、私達はそれらに惑わされず、適切な治療を適切に選択する、正しい判断、正しい考えを持たなければなりません。

今回はその基本となる考え方を投稿いたします。

そもそもチック症状とは何なのか?

先ずはチック症・トゥレット症を正しく理解する所から全ては始まります、こちらはリンク先をご覧ください。トゥレット症(チック症)とは?

チック症状をご理解頂けたら、次に考えることは、チックによる当事者(お子様)の困り度、生活の支障度を把握する。

チック症状により、当事者が生活に何らかの支障を感じている場合、治療(当事者に適した治療法)を検討します。

チックがあるものの、当事者(お子様)が特に気にしておらず生活に支障がない場合、チック症状が軽度な場合、治療の必要はまだないのかもしれません(念の為かかりつけの小児科等を受診するのも良)。

よくいわれるこの状態が「しばらく様子を見る」です。

では、生活に支障を感じるチック症状が出てきてしまった場合、どんな治療法を選択しますか?

おそらくこの投稿をお読みいただいている方は、必死にネット上を検索し、ブログやSNSを調べ、情報を収集されているのではないでしょうか?

先ず基本として心に留めて頂きたいことは

チック症トゥレット症の治療において、必ず効果がある、絶対改善するなど、現段階で絶対というものは存在しないということ

※当会でもチック症状への認知行動療法(ハビットリバーサル・呼吸法・CBIT・ERP)のセッションを行っておりますが、絶対効果があるとは言いません、「少しでもチック症状を改善させてあげたい」という気持ちでセッションを行っておりますが、私の経験からもその効果は個々に事なり、間違ってもその様に誤解を生む発言は、あってはならないことだと思っています。

チック症状は、何もせずとも自然に軽快していくこともあります、それが一時的な場合であったり、長期的なものであったり

そのタイミングにたまたま行っていた治療法が、効果があったのだと勘違いしてしまうこともある為、また精神的な問題からチックが悪化している事もある為、どの治療法がどれだけの効果があったのか?若しくは無かったのか?真実がより見えにくくなっているということ。

コロナの治療薬などの様にプラセボ(偽薬)と比較、つまり心理的要因などその他の影響がないか、対象となる治療法のみの効果を確認する為にRCTなどを行い、初めてエビデンスが明確になり、有効性が示されます。

※RCT(randomized controlled trial/ランダム化比較試験)ある試験的操作(介入・治療など)を行うこと以外は公平になるように,対象の集団(特定の疾患患者など)を無作為に複数の群(介入群と対照群や,通常+新治療を行う群と通常の治療のみの群など)に分け,その試験的操作の影響・効果を測定し,明らかにするための比較研究です。

私が今現在知り得るチック・トゥレットの治療法に、絶対的に効果がある、またはリスクよりベネフィットの方が確実に上回るという、万人向けの治療法は残念ながら存在しないのかも知れません。

しかしながら、逆を言えば、様々な治療法が絶対に効果がないと言えないのも事実ではないでしょうか

この様な不確かな現状の中で、私達は様々な選択をしなければなりません。

個々それぞれに適した治療法が少なからずあり、それらを適切に見分ける、その為に当事者の発達の特性や性格、取り巻く環境などを分析する、そこからチック症状の悪化要因が見え、適切な対処法が選択可能になる。

だからこそ先ずはチック・トゥレットを知る、そして当事者(お子様)を理解する、これが全ての基盤になり、改善への近道となります。

現段階では、答えは様々な治療法ではなく、当事者が持っており、当事者の中に改善の為のヒントが隠されています

それらを見つけたうえで、適した治療、当事者それぞれに合った治療法をご選択ください。

・不安や緊張などの精神的ストレスにより、チックが悪化している方もいらっしゃるでしょう→不安を取り除くための漢方や薬物療法、呼吸法、環境調整 etc…

・薬の苦手なお子様、薬の副作用が出やすい方もいらっしゃるでしょう→漢方や認知行動療法(呼吸法・ハビットリバーサル/CBIT)、栄養療法 etc…

・チック症状の裏に、実は他の神経発達症(発達障害)が潜んでいる場合もあります→先ずは発達検査等を行いお子様の発達の特性を知る、必要な療育を受ける、薬物療法 etc…

・強迫症(OCD)がとても強いチック症トゥレット症の方もいらっしゃいます→薬物療法や認知行動療法(暴露反応妨害法/ERP)、DBS etc…

・自傷系の運動チックが強い方もいらっしゃいます→薬物療法、認知行動療法、DBS etc…

・音声チックが主症状の方→呼吸法や薬物療法、歯科スプリント etc…

・そもそも治療に積極的でない方→環境調整、当事者にとってストレスの少ない環境作り、栄養療法食生活から見直す etc…

直接チックにアプローチする場合もありますが、間接的に様々なチックトリガー(チックの引き金)を対処する事で、チックが改善していくこともあります。

上記はあくまでも考え方の一例であり、必ずそうであるとは限りません、お子様それぞれによって考え方、効果のある治療法は変わってくるのだと思います。

※チック症状への治療は、同時にいくつも開始するのではなく、ひとつずつその効果を確認しながら行ってください

何故なら同時期にいくつもの治療を開始してしまうと、何が効果があって、何が効果がなかったのか分からなくなり、どの治療を継続すべきで、どの治療をやめるべきか判断できなくなり、必要のない治療を継続しなければならなくなってしまいます。

また、副作用などが起こり得る可能性のある治療法の場合、どの治療によってその反応が起きているのかも分からなくなってしまいます。

症状が悪化していると、藁にもすがる思いで、あれやこれやと良いと言われていることを試したくなってしまうかもしれませんが、それらは逆に遠回りになってしまうこともあります、チック症トゥレット症の治療は冷静かつ慎重に、一歩一歩確実に進めて行きましょう。

チック症状への認知行動療法のセッションを行っていると、クライアントのチック症状の悪化の原因、認知行動療法以外に更にどの様な治療が必要か見えてくる事もあります

当然必ずしもそれが正しいとは限りませんが、全ては当事者とのコミュニケーションの中から生まれてきます。

トゥレット当事者会では、その様な支援も無料で行っております、認知行動療法が適さない方も当然いらっしゃいます、その様な方には、カウンセリングから何かしらのアドバイスができる事もございます。

おひとりで悩まず、誰かに声をかけてみましょう、悩みを打ち明けてみましょう、当会のコミュニティは匿名でのご参加も可能です、私で良ければこれまでの経験をお話いたします。当会への悩み相談はこちらへ▶tourette.jp@gmail.com

まだまだ分からない事が多いとされているチック症トゥレット症、しかし当会は何百人もの当事者及び親御さんとの繋がり、これまでの支援や活動の中からその答えは少しずつ見えてきております。

道に迷ったら先行者に伺ってください、支援者や専門家に助けを求めてください、当会でなくとも、様々な支援団体がございます。

そしてチック症トゥレット症当事者に伺ってください、お子様に伺えなければ、当会やコミュニティのメンバー様に伺ってください、その為にトゥレット当事者会は存在し活動を行っています。

〈 追伸〉

TSブログの更新がしばらく出来ず申し訳ございませんでした、お陰様で当会の活動自体を忙しくさせて頂いているというのもあるのですが、実は日本学術会議の協力学術研究団体への入会を検討しており、その為の必要な試験を受けておりました。幸いにも試験には無事合格いたしましたので、これからもブログの更新を頑張らせて頂きます。皆様のお役になっている内容かは分かりませんが、少しでも役立つ情報を発信出来たらと思っております、今後もどうぞよろしくお願いいたします。